- 作者: ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/09/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (42件) を見る
しばらく技術書しか読んでいなかったので、今年は他の本も読んでいこうと思っている。そこでずっと気になっていた「サピエンス全史」の上巻をまず読んでみた。
全体として、
- 当たり前だと思っていてその理由を考えたことのなかった事象が数多く取り扱われている
- 現存している証拠から丁寧に説明がなされている
- 逆に証拠が乏しく断定できないことは可能性を列挙するに留めてあり、論理的でわかりやすい
- 歴史から現代の社会問題に切り込んでいてよい
- 歴史を知ることで現代を生きるうえでの教訓が得られる
という点が印象を受けた。
本書のなかで個人的に印象に残った文章は次の2つ。
たいていの社会政治的ヒエラルキーは、論理的基盤や生物的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたものにほかならない。
「自然な」「不自然な」という私たちの概念は、生物学からではなくキリスト教神学に由来する。
宗教、特にキリスト教について否定的な著者らしい指摘だと思う。この宗教の問題については下巻でも詳しく取り上げられているので、続きを読むのが楽しみだ。
読書メモ
第1部 認知革命
- まぜ人類は私たちホモ・サピエンス1種しかいないのか?
- 複数の種が存在して過去ではなく、私たちしかいない現在が特異
- 進化上の兄弟姉妹を欠いているので、自分たちこそが万物の霊長であると思いがち
- オーストラリア大陸やアメリカ大陸の多くの動物は、なぜ人類の移住後あっという間に絶滅したのか?
- ホモ・サピエンスはあらゆる生物のうちで、最も多くの動植物種を絶滅に追い込んだ
- なぜ人類の赤ん坊は他の動物と違って、未熟な状態で産まれるのか?
- 直立歩行のために腰回りを細める必要があった
- 自然選択によって早期の出産が優遇された(命の危険が少ない)
- 人類の言語・認知は、口語言語を持っている他の動物となにが違うのか?
- 想像上の現実「虚構」を生み出すことができる
第2部 農業革命
農業革命によって単位面積当たりの収穫量が急増し、ホモ・サピエンスは指数関数的に数を増やした
- 人間の脳で覚えきれない大量の数理的データを扱う必要がでてきたため、書記体系が発明された
- 多数の人間をまとめる大規模な協力ネットワークとして「想像上の秩序」が生み出せれる
「想像上は秩序」はヒエラルキーを成す架空の集団に分ける
- このヒエラルキーは、論理的基盤や生物的基盤を欠いており、偶然の出来事を神話で支えて永続させたものにすぎない
- 不正な差別は時が流れるうちに、改善されるどころか悪化することが多い
- ex) 黒人への差別
- 社会が異なれば採用される想像上のヒエラルキーの種類も異なるが、性別のヒエラルキーはどこでも共通して存在している
- 男性が女性より優遇されるケースがほとんどだが、その理由で納得できるものがない
- この一世紀の間に劇的な変化が起こっており、社会的・文化的性別の歴史にとまどう
奴隷制が非合法になっても、これまでの差別のせいで黒人家庭は貧しく教育水準が低いままだった。そのため良い教育を受けて、良い報酬の仕事に就くことは少なかった。 ホワイトカラーの仕事に就いている黒人の少なさが、彼らが人種的に劣っていることの証拠とされ、偏見は強まっていった。
管理職に女性を増やそうという流れは、逆に男女差別だとこれまで思ってたけど、強引にでもやらないとすでにある差別は解消できないのかもしれないと感じた。
第3部 人類の統一
- 人類を単一の集団としてまとめるグローバルなビジョン
- 貨幣
- 帝国
- 宗教
- タカラガイの貝殻は約4000年にわたって貨幣として使われた
- 「買」「賣」などのお金に関する漢字には「貝」が多く使われている
- これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度
- 帝国とは、二つの重要な役割を持った政治秩序のこと
- 文化的多様性
- 変更可能な国境